涎くり

2016年12月15日 16:54

2016年十二月大歌舞伎

今月の歌舞伎座興行は三部制であります。

息子は、第二部「寺子屋」と、第三部の「京鹿娘五人道成寺」に出ていますが、
寺子屋」では、“涎くり”というお役を演じております。

この「寺子屋」という場面のある「菅原伝授手習鑑」は、
菅原道真が、藤原氏の陰謀に遭い虚偽の訴えで左遷された事件などを基に、
道明寺」、「車引」、「賀の祝」、そして、今回上演中の「寺子屋」といった、
各場面を合わせたら、とても長い物語(通し狂言)なのでありますが、
江戸時代以来、何度も上演が重ねられてきた人気狂言で、
仮名手本忠臣蔵』、『義経千本桜』と並び、「義太夫狂言」の三大名作の一つです。

その「寺子屋」という場面は、
主の子を救うために自らの子の首を同志に刎ねさせて、
身代わりとしてその首を敵に差し出させるという夫婦が登場する、
なんとも残酷で切ない物語であります。

さて、
今回むすこが演じております“涎くり”というのは、
涎(よだれ)を垂らすような小さな子供を、あえて大人の俳優が演じることで、
その滑稽さを協調する効果を狙ったお役で、俳優として“おいしい”ことから、
“御馳走”と呼ばれているお役なのだそうです。

主の子を守るために、家臣が敵を謀って自分の子の首を差し出すという、
なんとも現代では受け容れ難い残酷な物語なのでありますが、その中で、
涎くり”の場面は、物語の残酷さを際立たせつつ救いを与えてくれるお役です。

ホントかウソか判りませんが、
名優の一人と謳われた十七代目中村勘三郎丈が“涎くり”を勤めて評判をとったときに、
女の子が生まれたので、その子の名前を“久里子”と名付けたという話です。

さて、
或る演劇評論家が、今回の「寺子屋」の劇評をこと細かく長文で書いてくださいました。
その中で、“涎くり”について触れてくださいました。

弘太郎の涎くりがリアルでうまく、「寺子屋」幕開きの芝居のトーンをつくった。
リアルでいて芝居のツボにはまっている。大手柄。


この二行弱の劇評で、
わたしたちがどれだけ嬉しかったことか、どれだけ救われたことか。
有り難いことです。


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