身内

2016年08月02日 23:59

「ちょっと診てくれねーか」

義父が、作務衣のズボンを下ろしはじめました。

「いや・・見なくても大丈夫ですよ。近いうちに医者に診てもらいましょう」

「いや、ヒデ君に診てもらったほうが早ぇーんだ」
でも・・・なにが早いのか判りませんでした。

これは、
きょうの午後、義父の入浴を介助したときのはなしです。

身体のどこにも病気のない義父ですが、
ことしの誕生日で88歳になりました。

わたしの実家の父などは、
70歳のときに妻に先立たれ、直後に肺ガンに罹っていることが判り、
肺を切除する手術をしたのを皮切りに、数限りないガンや病気と闘い、
なんとか、ことしの誕生日に87歳を迎えました。

昭和3年と4年生まれですが、
義父と父は、誕生日が一日違いですから、丸一歳違いであります。

方や満身創痍、方や歯も全て自分の歯で、健康診断でも異常なし。
つい、見比べてお説教のひとつも言ってみたくなります。

持病や既往症や後遺症があって、運動が出来ないワケではないのに、
「もう88歳だから」と言って、軽い運動すら怠っている義父なのです・・・。


さて、
きょうの入浴を終えて、着替えを済ませたときのことです。

「足が浮腫んじゃったなぁ・・」義父が、そう言いました。

「まえから、そう言ってるじゃありませんか?だから・・・、
椅子に腰かけているときに、出来るだけ足を上げていて下さいって」

「上げてるつもりなんだがなぁ・・」

「いや、ほとんど下ろした状態で腰かけていらっしゃいますよ」

「そうかねぇ・・?」

「それになにより、歩かないことが原因だと思いますよ」

「齢取っちゃったからなぁ、コンビニに行って帰ってくるのが限界だなぁ」

「むかしは、あんなに運動をしていらっしゃったじゃありませんか。
伯父さん(亡くなった義父の長兄)は、目もおワルかったのですし、
歩くことが自由にお出来にならなかったようでしたが、それでも、
88歳で亡くなられましたよね?」

「兄貴は、若いころから運動をしなかったからね」

「若い頃、運動しなくても、学徒出陣を経験されても、
88歳まで生きられたんですから、ご立派じゃないですか」
すると、義父は黙ってしまいました。


そして、矢庭にこう言いました。それが、冒頭の会話です。

一日腰かけていることがつづいて、尻に床ずれが起きているらしい。
痛いから、そこを見てくれというのでした。

「わたしが見たって仕方がありませんから、医者に診てもらいましょうよ」
と義父に言いながら、恥ずかし気もなく尻を向けてくる義父を見ていて、
なんか・・・、
わたしを、身内だと思ってくれているんだなと思って、少し嬉しかったです。


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