47のチカラ~私の別格~

2015年11月24日 23:59

47のチカラ~私の別格~2015年11月22日放送

東京FMラジオの毎週日曜日12時00分~12時25分放送
キリンビバレッジPresents 「47のチカラ ~私の別格~」
案内人:住吉美紀

11月22日(日)に放送された同番組で、
わたしの実家のみかんについて、甥っ子がお話ししました。

タイトルは、
静岡県・浜松市の“チカラ”-浜松みかんが美味しい秘密!-

番組の終盤で、
甥っ子が、祖父(わたしの父)について話しています。
どうして、みかんを作ろうと思ったのかという話です。

番組の構成上、時間に限りもありましたので、
肝になる話を、少しだけ補足したいと思います。


父は、15歳で志願して予科練に入隊しました。
両親には反対されたのですが、意志を貫いて、
生きて再び此の橋を渡ることはないだろうと思いながら、
故郷の橋を渡って兵士になりました。

しかし、16歳で終戦を迎えます。

生きて故郷の橋を再び渡ることが恥ずかしかったそうです。

戦後、祖父の下で、家業のみかん作りを手伝ったり、
材木を運ぶ木炭トラックの助手を務めたりしながら、
仲間を集めて勉強会を主催するようになります。

「人生、如何に生くべきか」
敗戦で、大規模な社会体制と価値観の変革が起こっていました。

仲間で出し合った金を預かって、東京の神田に本を買いに上京しました。

そのとき、
上野の地下道で飢えて動けない多くの人々に遭遇します。
日本の首都・東京は、廃墟のようだったそうです。
父は、兵士だった自分の責任を痛感しました。

此の国をこんな状態にしてしまった責任をとらなくてはいけない。
そのとき、父は父なりの“戦後処理”を使命に生きようと決心します。

神田の古本屋で、安岡正篤先生の書かれた本に出会います。
後に、安岡先生が主宰されていた日本農士学校に入り、
大胆にも宵に安岡先生の庵を独り訪ねて問うたそうです。
「人間、如何に生くべきか?」

そのとき受けた薫陶を胸にして、父は一つの目標をイメージします。

それは、
“日本中の家庭のコタツの上に、当たり前のように籠にみかんが盛られている風景”
戦後の食糧難の時代、栄養失調で亡くなる方がいた時代の“夢”です。

終戦直後は、食料が足りませんから、
需要に応じて、兎に角お腹にたまる芋などのデンプン農業。

それがある程度足りてくれば、卵や肉と言ったタンパク農業。

それが行き渡るようになれば、
栄養価を気にして野菜、果物などのビタミン農業の作物が供給されました。

つまり“みかんがコタツの上にある”ということは、
デンプンもタンパク質も野菜も足りているということです。

そして、昔のみかんは皮が厚くてすっぱくて、そして高価でしたから、
“日本中の家庭に”、“当たり前のように”、というのは、
みかんが“美味くて、“安くて”、“沢山ある”という条件が満たされたときです。


父は勉強して、静岡県の清水に在った農林省の果樹試験場に入ります。
やがて、故郷徳島の果樹試験場に勤めるようになり、結婚して、わたしが生まれました。

しかし、
果樹試験場の技師の話を聴いて、それに倣ってみかんを作る農民はいません。
一念発起し、自身が開拓農民となって理想のみかん農家を創ることにしました。

父が、母とわたしと母の腹の中の妹と共に、
静岡県浜松市の三方原台地に入植したのは、1958年(昭和33年)のことでした。

父が考えた、ブルトーザーを使った機械化開墾と密植栽培法によって、
10年で投下資金を償還して売り上げが農家の所得になるという
早期成園化に成功し、その技術が普及して全国にみかん産地が誕生しました。

そして、
入植した1958年(昭和33年)当時75万トンほどだった全国の生産量ですが、
幾度の台風や寒波の洗礼を受けながらも日本の温州みかんは、
1975年(昭和50年)に367万トンという史上最高の生産量に達しました。
当然、みかんの価格は大暴落しました。わたしが高校を卒業した年です。

しかし、
そのとき父は、独りひそかに喜んでいたのでした。
みかんが“美味くて”、“安くて”、“沢山ある”という状況が生まれたからです。

“日本中の家庭のコタツの上に、当たり前のように籠にみかんが盛られている風景”
父の“夢”が叶ったのでした。

その夢とは、つまり“平和”そのものだったのです。
それが、15歳で兵士になった父の“戦後処理”でした。


長いながい父の話におつき合いいただき、恐縮です。





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