萌黄色の季節

2014年04月16日 23:59

武志政幸の本

「あぁ、ちょうどこの時季だった・・」

そう思い、タケちゃんの本を引っぱり出して、頁をめくってみました。

タケちゃんについては、以前から何度もこのブログに書いてきましたが、
詳しくは、「タケちゃん」という部分をクリックしてご覧ください。

その本は、
タケちゃんの41年間の短い人生の様々な場面で出逢った様々な人たちが、
点となって、それぞれの出逢いや想い出や想いなどを記すことで、
タケちゃんという人を面として描こうという趣旨で作った本でした。

81の個人や団体が発起人として協賛金を寄せてくれました。
86名の方から文章が寄せられ、172ページに及ぶ本が完成しました。

わたしは、本の中で、
タケちゃんの最期の様子について、書きました。
タケちゃんの最期の様子を載せてほしいと要望があったからです。
「なぜわたしが?」という思いのなか、
むかし、或る通夜の席で遇ったタケちゃんに、
「おまえ、葬式っていうと必ずいるなぁ・・」
と云われたことを思い出しておりました。


その、わたしが書いた終わりの頁には、このような内容が記されています。

その年の2月24日、
食道の手術をしたタケちゃんは、
術後、水分も食事も摂れない日々をつづけておりました。

4月3日、
見舞いに行ったわたしが、
病院近くの堤に咲いた桜を観に行こうよと誘っても、頷きませんでした。

4月9日、
病院の中でタケちゃんは転倒して頭を打って意識不明になりました。

4月10日、
回復室と呼ばれる集中治療室の周りは、人で埋め尽くされていました。
危篤だと聞いた人たちが集まってきたからでしたが、
大学病院始まって以来の状況だと病院からきつく改善を求められ、
たまたま居合わせたわたしなどが代表して、交代で看守ることにしました。

4月14日、
転倒して5日目。タケちゃんは目を醒ましました。
目を開けただけでなく、明らかに目で喋っていました。
「オレはどうなっちまったんだ?」

4月15日、
医師から、一般病室へ移ってもよいと云われました。
酸素吸入器を外してもらい、会話はできるようになりましたが、
6日間も酸素吸入器を押しこまれていたためか、無声音でした。
午前11時回復室を出ました。本当に“回復”したのでした。

4月16日、
見当識に障害があるため、幻想や幻覚と現実を区別するように、
医師からアドバイスがありました。

友人に、指を二本立てて、「煙草もってない?」と云ったり、
わたしに、身体の揉み方を細かく指示したり、
お母さんに、「うちに帰ろうよ」と云ったりしました。

そのうちに、
足元にある扉が、エレベーターに見えたらしく、
なにかを指差して、なにかを押せと云いました。

訊いてみると、
エレベーターのボタンを押してくれと云うのです。

そして、
「もういいよ。行こうよ!」と云うのです。

何処へ行く気なのかと訊くと、
「うえだよ上、だから押してくれよ。うえ行くんだよ、もういいよ」
と云いました。

わたしは、医師のアドバイスの通り、
逆らわないつもりで、根気よく説明をしようと思いました。

タケちゃん、ここは8階だよ。まえに居た病室も8階。部屋を替わったの。
よく見てみなよ、これはドアでしょ?エレベーターのボタンなんかないじゃない」

すると、
「まったくこの野郎ぶん殴ってやりてえなぁ」
タケちゃんは、わたしにそう云いました。

もしかしたら、
タケちゃんは、別の意味で
「もういいよ、上に行くよ」と云っていたのかもしれません。

4月17日の夜、
わたしは、交代して自宅に戻りました。
かみさんは、その日引退する後輩のコンサートに行って留守でした。
友人といっしょですから、きっと酔って帰ってくるなと思いました。
みんな、仲のよいタケちゃんの後輩たちでした。

テレビで「フィールド・オブ・ドリームス」をやっていました。
それを観てから、風呂に入って湯船に浸かっていると、
電話が鳴りました。義母がわたしを呼びました。病院からでした。

8階のエレベーターが開いたら、
わたしと交代したオサムちゃんが、そこに立っていました。
オサムちゃんが「間に合わなかった」と云いました。
23時37分、2分遅れでした。

タケちゃんは、
病院の地下の霊安室に移されました。
簡単な焼香台が用意されました。

うちのかみさんが、やはり少し酔って入ってきました。

桜の花が散った、萌黄色の季節の想い出です。


明日は、タケちゃんの二十三回忌にあたります。

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