FC2ブログ

「藪原検校」の綱

2014年03月29日 23:45

「まず当時台本を手にして、発想の豊かさにこれは面白くなると思ったが、舞台装置としてむずかしいなあとも思った。あたりまえのセットではとてもつまらないし、装置は劇場の空間ともかかわりのあることなので、その当時パルコのように観客席が急斜面になっているのはめずらしかったので、上から見おろすことを考えて、床をなんとかしたいと思った。演出の木村さんと相談して、まず綱を使うことを考えた。これは井上さんの戯曲の初めのところに目の不自由な人は綱につかまるということがあったので、綱をたよりに、たてとよこに綱を張ることを決めた。」
(地人会「藪原検校」公演パンフレットより)


これは、地人会の「藪原検校」公演のパンフレットに載った、
「スタッフは語る」という特集の、朝倉摂さんの文章です。

舞台美術家・朝倉摂さんといえば、
手掛けられた数々の舞台美術作品が思い出されるかと思います。

蜷川幸雄さん演出の「にごり江」「近松心中物語」、「下谷万年町物語
木村光一さん演出の「藪原検校」、「越前竹人形」、「調理場
三代目市川猿之助さんと組んだスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」
篠田正浩監督映画「夜叉ケ池」などなどです。

しかし、
わたしがひとつだけ挙げるとしたら、やはり、
井上ひさし戯曲、木村光一演出「藪原検校」でしょう。

藪から棒ですが、
藪原検校」は、井上戯曲の最高傑作だと思います。
それは、日本全国、世界で認められた事実です。

ところで、「藪原検校」という傑作はモチロン、
井上ひさしという天才と、稀代の演出家・木村光一の代表作ですが、
同じく、舞台美術の朝倉摂、音楽の井上滋宇野誠一郎
照明の古川幸夫、効果の深川定次、振付の関矢幸雄花若春秋
歴代の舞台監督と各スタッフと金内喜久夫を始めとする俳優諸氏、
そして、なによりもプロデューサーであった本田延三郎がいなければ、
創れなかった奇跡的な舞台でありました。

その「藪原検校」といえば「綱」と謂われるほど、
舞台に縦横無尽に張られ、舞台に垂れ下がった、
舞台美術で舞台装置でもあった「綱」の存在は、
藪原検校」の象徴にしてテーマでもあったのではないかと思います。

初演時、朝倉摂さんと、五月舎のプロデューサーであった
本田延三郎さんが、手ずから、何日も川に通って布を染め、
裁いて綯って作ったという「綱」です。

その「綱」が、いまでは戯曲の中に記されているのです。
初演時に、天才と稀代の名人たちによって創造された内容が、
あらためて戯曲化されたという、いい例であります。

その意味では、
藪原検校」という作品は、朝倉摂さんの作品なのでした。

明日の、お通夜を前にして、思ったことでした。
スポンサーサイト





コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://coachhide.blog73.fc2.com/tb.php/1940-e17477e8
    この記事へのトラックバック


    最新記事