2017年03月02日 18:23

むかし、わたしが演劇の勉強をしていたころ、
男子学生たちが演ってみたい芝居のベスト3に入っていた作品に、
ゴーリキーの「どん底」という芝居がありました。
そして、
演るとしたら、どの役を演ってみたいかなどという話で盛り上がったものです。
ですから、
ひとつ上の期の先輩たちが、千田是也演出で「どん底」を演ると知ったときは、
これで暫く上演されることは無いワケですから、羨ましいというより、ショックでした。
因みに、演ってみたい役で多かったのは「サーチン」でしたが、
たぶん、その当時上演された劇団俳優座公演の仲代達矢さんの影響でしょう。
わたしは、帽子屋のブブノフか、巡礼のルカが演ってみたかったですケドね。
さてそんなワケで、
本日の文芸坐三浦館の上映作品は、黒澤明監督作品「どん底」であります。
1957年(昭和32年)9月に公開されました。製作と配給は東宝であります。
映画「どん底」は、マクシム・ゴーリキーの戯曲「どん底」を翻案し、
舞台は日本の江戸時代の貧しい長屋に置き換えられています。
その貧しさといったら“超”が付くほどの貧しさで、
これより下が無いという意味では、まさに“どん底”なのであります。
長屋といっても、家屋の体を成していないような傾いたあばら家で、
部屋らしきものは無く、皆が板の上に雑魚寝しているような有様です。
但し、戯曲「どん底」と比べると、映画「どん底」にはある種の明るさがあります。
これ以上ないほどのどん底であるにもかかわらず、
まさに“底抜けの明るさ”とでも云ったらよいのでしょうか?
その明るさを醸し出しているのは、なんと言ってもその個性的な俳優たちの功績でしょう。
真っ先に三船敏郎の名が載っていますが、三船さんが主役というワケではありません。
ではダレが主役かといえば、
或る人は三船敏郎と答え、ある人は山田五十鈴、またある人は左卜全と云うでしょう。
つまり、「どん底」は、戯曲も映画も主役の決まっていない群集劇なのであります。
三船敏郎、香川京子、山田五十鈴、千秋実、藤原釜足、東野英治郎、田中春男、
上田吉二郎、左卜全、藤田山、藤木悠、渡辺篤、三井弘次、三好栄子、根岸明美、
清川虹子、中村鴈治郎。
それにしても、この出演たちの巧いこと巧みなこと。
わたしは、特に渡辺篤さんと三井弘次さんがスキですね。
と云っても、ご存知ですか?渡辺篤さんと三井弘次さん。
上の写真で三船さんを後ろから抑えている二人、右が渡辺篤さん、左が三井弘次さんです。
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