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始まりの日

2010年02月16日 20:47

「始まりの日」                 K橋高校 同級生 M ・ Y 

高校の二年の六月の土曜日でした。
「今日俺の家に泊まりに来いよ」と、もう一人の友達と共に誘われました。
それまで親戚の家にすら泊った事もない私は、一瞬戸惑いました。
明治生まれの父は江戸っ子気質ながら真面目一方で、
母はその上をいく堅物でしたので、外泊など許す人ではありません。
私の上の四人の兄姉も外泊などしたこともない家庭でした。
それに、同じクラスになるまで面識はあったが(彼はすでに校内では有名人でした)
一度も話をした事もなく、まだたった二ヶ月の付き合いで、
何故私をさそうのだろうと思ったからです。
しかし、私は何かを期待したのもあり、又、
彼のあの人なつっこい顔を見ているうちに自然と「いいよ、何時頃に行けばいいの」
と返事をしてしまいました。
家に帰り、やっとの思いで母に許可を得て初めての外泊をする事になりました。

その夜、京成の「町屋駅」で八時に待ち合わせ、彼の家につれていかれました。
路地又路地を通りぬけ、何処をどう歩いたかわからないうちに路地奥の家に着きました。
二部屋に台所、その一部屋にはダブルベッドがあり、
どう見ても友達と二人寝る所などないのですが、彼は意に介せず
「おう、その辺すわれよ。どうせ親は夜中しか帰ってこないからよう!」
とコーラを出してきました。

雑談に飽きた頃、「ちょっと一服するか」と何げなく缶ピーを出して「お前もやれよ」と。
それまでタバコもパチンコもやった事の無い私、
又そういう友達に恵まれなかった私にとってはオドロキでした。
私が初めてだというと得意気な顔をして説明しはじめました。
「いいか、フィルターが付いてないから吸う方を指で少しつぶすんだ。
そうしないと草が口の中に入ってくるからな。
火を点けたら、ゆっくりと深呼吸をする様に吸い、煙を肺の中まで入れるんだ。
そうしないとけむたいだけで味がわからないからな。あとはゆっくり吐くんだ、
白い煙が透明になって出てくるから。いいか!よく見てろよ」
例の調子で懇切丁寧、くどい説明でした。
彼が吸ったあと、私も同じようにやってみました。
深く吸い、飲み込み吐き出そうとした時、頭はフヮーとなり、
目は廻りそのまま吐き出しながら後にたおれていきました。
「おい、大丈夫か」と言いながらもケラケラと笑っていた彼でした。
これが私の初めてのタバコ経験であり、彼に教わった最初のものでした。
その後、彼の家に泊るごとに教えられたものは、
酒・花札・パチンコ・チンチロリン・麻雀・競馬 etc 。

この夜以来、彼との永くも非常に短かった付き合いが始まりました。
今でも、あのにくめない顔が思い出されます。


※ご遺族のお許しを得て、全文掲載させて頂きました。
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